行方不明事件を題材にした秀逸なミステリー「未解決事件は終わらせないといけないから」 クリアレビュー

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  • ジャンル:ビジュアルノベル
  • CERO:A
  • 発売年:2024年
  • 発売元:Somi
  • 値段:800円
  • ハード:Steam
  • クリア時間:3時間

ミステリーゲームとして最も大切なもの、それはゲームの中でどれだけ物語性を示すことが出来るかである。数十時間、数百時間プレイする大作ゲームでは徐々に物語のテーマを示せばいいが、3時間程度のボリュームのインディーゲームでは難しい。

しかし、本作は何も状況が理解できないところから始まり、一つの閃きですべてのピースがはまって物語がつながるという濃密な体験を3時間で見事に描き切っている。本作は秋の夜長、休みの前日に一気にプレイするのがおすすめな名作インディーゲームです。

ポコたく
ポコたく

各所で話題になっている「未解決事件は終わらせないといけないから」をクリアしたのでレビューしていきます!

初めに一言だけ、神ゲーです。

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ゲーム紹介

個人開発者のSomiさんがほとんど一人で作り上げ、既に1000件以上の圧倒的に好評なレビューも集まっている、2024年を代表するであろうノベルゲーム。

推理物では珍しく、行方不明事件が題材となっている。昔の捜査を思い出すという形式のため、発言者が誰だったか、証言の時系列はどうなっているのかがバラバラな状態で提示される。主人公(プレイヤー)は発言者が誰か時系列はどうなっているかを考え、推理して整理していくゲーム性。

国語の順番並び替え問題と原理は同じであり、キーワードを読み解いたり話の食い違い、代名詞の使い方などを見ていくことで事件の全貌が理解できる。

どのキャラクターが話しているのか、どの順番で物語が進むのか推理しながら読んでいくと、真相が見えてくる。

ホラー要素は全くないので純粋に推理ゲームとして楽しめる。

ここまででこのゲームに興味を持った、持っている場合は是非自分の手でプレイするのをおすすめする。他人がプレイした動画・記事でこのゲームを消費するのはあまりにももったいない。

※ここから先はネタバレを含みます!!!!!

プレイしやすい親切なUIと盛り上げる音楽

韓国の方が制作ということで、日本語へのローカライズが心配な人もいるかもしれないが、本作は丁寧に日本語化されている。日本語ネイティブの人が作ったと言われても納得できる出来。

SNSのようなUIで、次の話題に移るためのヒントが豊富に用意されている。

推理で詰まることはあっても、操作で詰まることはない。

文章を読み進めていくゲームのため、文字の読みやすさは重要なファクターだが、読みやすい文字サイズフォントで構成されている。画面もダークモードで目に優しい。

目に優しいダークモード

メインのゲームシステムである発言者の整理をワンボタンで、発言順の並び替えもワンタッチで行えるためストレスフリー。スマホゲーにも移植できそうなので期待。

ゲーム序盤はチルい感じの緩やかなBGMが流れているが、物語が進行し真相が明らかになってくると、音楽が盛り上がり熱いBGMが流れる。音楽の切り替えも見事で、ゲーム本編に集中していると切り替えのタイミングが分からず、気づいたらBGMに合わせて気分が高揚している。

未解決事件の解決までを3時間で描き切る圧倒的ストーリー

映画では2~3時間で起承転結が描き切られる。3時間程度でクリアできる本作は、自分でプレイできる映画と捉えることもできる。

初めは誰が発言したのかもわからない証言が次々と時系列を無視して放たれる。ここで脳が混乱してプレイを中断する人がいるかもしれないが、一旦我慢してプレイを続けてほしい。

ある公園で未就学児の女の子「犀華」が行方不明となり、すべての関係者が嘘を付く中物語は想像以上の悲しくも温かい幕を下ろす。話の核心を理解したときの鳥肌がすごかった。

自分でプレイするからこそ得られる物語への没入感や思考の流れはゲーム独自のものであり、普段はあまりシナリオゲームに触れてこなかったという人にこそおすすめしたいゲーム。プレイ時間の短いここから入ってもらって、ダンガンロンパや逆転裁判といったミステリーADV沼にはまってほしい。

登場人物

  • 宮城哲郎:宮城犀華の父親
  • 松田理佐子:松田犀華の母親 子を出産108日目に亡くし、妄想の世界に生き始める
  • 原島公正:松田犀華の父親 宮城犀華誘拐の犯人
  • 宮城翔太:宮城犀華の兄
  • 槙野恵:宮城家のヘルパー 宮城翔太との関係に悩む
  • 松田貴子:松田理佐子の母 

ストーリー解説

同時期に原島犀華と宮城犀華という二人の女の子が生まれる。しかし、原島犀華は早産により、出産108日目に亡くなってしまった。島原犀華の母、松田理佐子は犀華が生きているという妄想の世界で生き始める。

それからしばらく時間が経ち、夫とも離婚した松田理佐子の元に数年後、原島犀華への就学通知書が届く。生まれたときに出生届は出したものの、原島犀華が死んだことを認められない原島家では死亡届を出さなかったためである。

自身の妄想の世界と現実がリンクした松田理佐子は、自身の娘を探すために公園を徘徊するようになる。すると、ある日「犀華」と呼ぶ男の子の声が聞こえた。宮城犀華の兄である宮城翔太が、妹に向けて呼びかけた声だった。

その声を聴いて、自分の娘である犀華がそこにいると考えた松田理佐子は、家の近所で遊んでいる子供を迎えに行った母親のように、自然と家へ宮城犀華を連れてきた。宮城犀華も「おばさん、おばさん」とにこやかな顔で過ごしていた。

原島犀華の父親である原島公正は、病んだ元妻が他人の家の子供を連れてきたことに気づき、宮城犀華の家を探す。そして誘拐から三日後、宮城犀華の家へ送り届けた。

原島公正は、原島犀華が松田理佐子の中で生き続けられるように、失踪届の中で生き続けられるように、懇願する。「永久に、この事件を未解決事件にしてくれ」と。

まとめ

ぱっと見では夜中にプレイすると寝ちゃうんじゃないかと思うような画面構成だが、親切なUIで快適にプレイでき、物語と音楽の盛り上がりによって、最後まで熱中し眠気を吹き飛ばす威力のあるゲームである。

やはり、夜更かしのお供に最適なゲームだと思うので、秋の夜長にプレイしてみてはいかがだろうか。

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