「フン。俺は世界を救った男だぞ」
ダンガンロンパ十神 下
ダンガンロンパ公式スピンオフであるダンガンロンパ十神のレビューをしていきます。ダンガンロンパシリーズのネタバレが多く含まれています。
また、ダンガンロンパシリーズのつながりは以下の記事を参考にしてください。
ダンガンロンパ公式スピンオフは色々あるが、断トツで人が死んでいく。
スピンオフだからこその仕掛けもあり、小説としても面白い。
オリキャラ紹介
ここで紹介する以外にも様々なキャラクターが登場するが、大筋には関係しないため割愛する。詳細は自分で読んで確認してもらいたい。
十神一族
「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」に登場する、十神白夜との通信簿イベントで明らかになる十神家の当主になるための蹴落としあいが本作中で描かれる。
現当主「十神鬼城」が全国に作った子供の中で、次期当主にふさわしい人物を決めるために孤島へ集められた十神一族は15人。全国には108人の鬼城の血を受け継いだ子が存在したが、そのうち93人は本人たちも気づかないうちに勝負に負けている。
絶望的なネーミングセンスで、鬼城の子供への関心のなさが見て取れる。
- 一郎
- 二郎
- 三郎
- 四郎
- 朝
- 夜 etc.
孤島に集められた十神家のうち、十神白夜の名前はない。そんな白夜がどのように当主の座を得たのかがポイントになる。
ダンガンロンパ本編も真っ青な、孤島で一族の血みどろの殺し合いが繰り広げられているため、詳しくは本作を読んでいただきたい。
「超高校級の書記」 十神忍
十神白夜の姉を自称する希望ヶ峰学園77期生の「超高校級の書記」で、先述した孤島での殺し合いの生き残り。殺し合いの最中に片目を失っていて、高性能AI義眼であるボルヘスを装着し、十神白夜の伝記小説「白夜行」を執筆することを目標に白夜の周りに付き従う。
白夜とは異母姉弟。
本作は彼女の視点から描かれることが多く、彼女の認識が文章となって読者へと届く。
「元超高校級の殺し屋」大槻涼彦
元々は十神涼彦という名前で、十神忍の実の兄。元超高校級の殺し屋の称号にふさわしく、ジェノサイダー翔・戦場むくろと互角以上の戦いを繰り広げた。
殺し屋ならではのスキルも持っている。詳しくは本編へGO。
十神和夜
ある事件で孤児となったのを忍に拾われた、忍の義理の弟。
十神の血を受け継がず、才能も持たない自分に苛立ちを感じていて、自身の腕を改造したりしている。希望ヶ峰学園という才能至上主義の功罪を感じるキャラクターである。
ストーリー解説
ここからは本小説だけでなく、スーダン2のネタバレも含むので気を付けてください
時は希望ヶ峰学園閉鎖の数年前にさかのぼる。ある孤島で十神一族の子供たちが集められ、次期当主を選ぶための謎解きが行われるはずだったが、そこで凄惨な殺し合いが始まった。
そんな中、探偵図書館900ランク(詳しくはダンガンロンパ霧切にて)の七村彗星と助手のポラリス(女の子)が殺人事件調査の依頼を受けて島にやってくる。
十神の血を受け継がない十神和夜が一族を皆殺しにして、自分が当主の座に座るための犯行であることを見抜き、七村は帰っていく。
地下牢に幽閉された和夜だが、そこに「十神家繁栄の秘密」である件(未来を予言する牛の妖怪)が現れ、和夜を救い出す。予言に従い行動していくと次々に隠された秘密が明らかになっていき、最終的に館は火災に巻き込まれる。(細かい描写は本作を買って読んでください。館ミステリーとして遜色ない出来栄え。)
おすすめ館ミステリー ダンガンロンパ霧切を書いた北山さんの小説
殺し合いと火災に巻き込まれ、島のほとんどの者が死んだ中、涼彦・忍・和夜と執事のペニーワース、そしてポラリスが生き残った。そして、ポラリスが十神白夜の変装した姿だと明かされる。白夜が勝者となり、十神家の当主として君臨することになる。
そして数年後(アニメ3 絶望編の後)、十神白夜が全世界に対して世界征服を宣言した。しかし、宣言を出したのは絶望に堕ちた「超高校級の詐欺師」が変装した十神で、この宣言によって世界を混沌に向かわせようとしていた。
読むと絶望化する絶望小説が蔓延する世界で、本物の十神白夜は実際に世界を征服し世界を調停することにした。絶望化した希望ヶ峰学園77期生の「絶望ハイスクール」や超人的な能力(タコの触手を操る)を持つ「初瀬川研究所」などの妨害を受けながらも世界征服のために邁進する。
十神忍を人質に取られた十神白夜は何を選択するのか……!!
おすすめポイント
圧倒的な「十神白夜」
原作ダンガンロンパではかませ眼鏡として後半になるほど弱体化していた印象の強い十神白夜だが、本作では圧倒的な能力を持つ人物として描写される。
そこにいるだけで自身に勝利を呼び込み、自身の手ごまを最大限に有効活用して少ない手勢の中で巨大な組織に勝利する姿が描かれる。1の十神と2の豚神の良いところを併せ持ったような存在で、「超高校級の御曹司」の存在感がひしひしと伝わる。
活躍する十神を見たいファンの人は読んでおいた方がいい。
小説ならではの叙述トリック
本作には叙述トリックが詰め込まれている。一人称視点で描かれる小説で、キャラクタービジュアルが存在しない関係上信頼できない語り手が多用されている。
僕はミステリー小説で一番大事なのは叙述トリックをどれだけうまく仕込めるかだと思っているため、本作はとても良かった。
小説ならではのギミック、特に原作の存在するノベライズだからこそのトリックを盛り込んでいて、ノベライズならではの作品に仕上がっている。
豊富なパロディ
ER3機関(西尾維新 クビキリサイクル)やドクター・オクトパス(スパイダーマン)など他作品のパロディがここぞとばかりに詰め込まれている。
元ネタを知らないでも楽しめるが、知っておくともっと面白い。
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