この記事では生存組の腐川冬子の通信簿イベントをまとめています
通信簿イベント-1

腐 ………………
………………
苗 (腐川さん、ずっとボクの前に立ってるけど、何か用なのかな…?)
腐 ………………
苗 (でも、何も喋らないし…)
腐 ………………
苗 (むしろ、こっちから、話題を振ってあげた方がいいのかな?)
あ、あのさ…腐川さん…?
腐 何よ? あたしと話したいの? し、仕方ないわね…! 話しなさいよ!
苗 (でも、話題を振るって言っても…えーっと…)
…あのさ、腐川さんってさ、普段は何をしてるの?
腐 な、なんで…そんな事聞くの…?
苗 いや…なんでって言うか…
一緒に閉じ込められた”仲間”だし、お互いの事を色々と知っておいた方がいいかなって…
腐 …え? なんて言った?
苗 は…?
腐 一緒に閉じ込められた…なんて言った?
苗 仲間…
腐 うふ…うふふふ…
な、何が仲間よ…そんな言葉で騙そうたって…そうはいかないわよ…!
前に…それで痛い目に遭った事だってあるのよ…だ、だから…もう騙されないわよ…!
苗 (それで痛い目って…何があったんだ?)
腐 そ、そもそも…あたしの事を知りたいなんて…口から出まかせでしょ?
ど、どうせ、あたしになんか興味ないのよ! それくらい…わ、わかってるわよ!!
苗 い、いや…そんな事は…
腐 だ、だったら答えてみなさいよ…
苗 …何を?
腐 あ、あたしが”超高校級の文学少女”って事は…さすがに…知ってるわよね…?
苗 うん、もちろん…文学賞だって、たくさん受賞してるって…
腐 あたしが得意とする小説のジャンル…それを答えてみなさいよ…!
あ、あたしに興味あるって言うなら…答えられるはずよ!
苗 (”超高校級の文学少女”腐川さんが得意とする小説のジャンルは…)
恋愛小説…だよね?
腐 あ、あら…答えられた…?
苗 「磯の香りの消えぬ間に」は、腐川さんの代表作ともいえる恋愛小説で…
影響を受けた若い女性の間で漁師が大人気になるなど、社会現象を生み出す大ヒットとなった…でしょ?
腐 ど、どうして覚えていられるの?
だって…あたしの事なんて…なんの興味もないはずなのに…!
苗 だから、興味ない事ないって。だって、ボク達は仲間なんだよ?
腐 ううっ! 眩しいわ! あんたの真っ直ぐさが眩しいわ…!
ひぃぃぃぃぃ…!
苗 (妙な奇声を発しながら、腐川さんは走って逃げて行った…)
なんだか、よくわからないけど…嫌われたっぽいな…
通信簿イベント-2

腐 ………………
苗 (腐川さん、てっきりボクを嫌ってるとばかり、思ってたけど…)
腐 ………………
苗 (その割には、ボクを避けてる訳でもないし…かといって、話す訳でもないけど。)
あ、あのさ…腐川さん…
腐 な、何よ? 何が聞きたいの? 仲間のあたしの何が知りたいの…ッ!?
苗 (あれ? 喜んでる…?)
えっとさ…前に聞きそびれたんだけど、腐川さんって、普段は何をしてるの?
腐 小説を…書いてるわよ…連載を持ってるから…忙しいのよ…!
勉強と小説の両立に…忙しいのよ…ッ! あんたみたいな”間抜け”と違ってね…!
あぁ、やっちゃった…あたしったら…また余計な事を言っちゃった…
これで確定ね…嫌われたわね…むしろ、いじめの対象になる訳ね…
苗 い、いや…別に気にしてないよ…
そんな事より、小説書くってすごいよね。しかも、それが世間に認められてるなんて…
でもさ、小説のストーリーとかって、どうやって浮かんでくるの?
やっぱ実体験が元とか…
腐 あんた、バカァ!?
苗 え…?
腐 い、言ったでしょ…? あたしの小説は…恋愛小説だって…!
あたしの実体験から…恋愛のストーリーが出来る訳ないじゃない…!
妄想よ妄想! すべて妄想!
妄想なら恋愛したい放題でしょ! 実生活がさっぱりだとしても!
そ、それとも…恋多き人間じゃなきゃ…恋愛小説書いちゃ駄目って言うの…?
苗 い、いや…そういう訳じゃないけど…
腐 べ、別に…いいけどね…バカにされるのは慣れてるし…
だ、だけどね…
絶対に…いつか見返してやるから…ッ! キレイになって見返してやるから!
苗 (煮えたぎるマグマのような恨み言を残し、腐川さんは去って行った…)
今度こそ…嫌われたっぽいな…
通信簿イベント-3

腐 ねぇ、あんた…ちょっと話があるんだけど…
苗 (あれ、珍しく腐川さんの方から話しかけてきた。
…っていうか、嫌われたとばかり思ってたけど…)
腐 ちょっと…聞いてるの…?
苗 あ、ごめん! 聞いてるの!
腐 ど、どうしても訂正しておきたい事が…あるのよ…
ま、前に誤解を与えるような事言っちゃったせいで…あんたは勘違いしてるかもしれないけど…
苗 …あの、なんの話?
腐 実生活では…恋愛はさっぱりって話よ…
で、でも勘違いしないで…まったく経験がないって訳じゃないのよ…!
あ、あたしだって…デートくらいはした事があるんだからね…!
苗 そ、そっか…
腐 ウ、ウソじゃないわ…本当よ…! なんだったら話してあげるわよ…ッ!
苗 いや…ボクは別に…
腐 あ、あれは…あたしが中学2年生の時よ…突然、隣のクラスの男子からデートに誘われたの…
苗 (…始まっちゃった。)
腐 デートプランは…あ、あたしに任せるって事だったから…
丸3日徹夜で考えたわ…そ、その結果…考えたプランが…
や、やっぱり…初デートだし…定番だけど…2人で鑑賞する事にしたの…
苗 鑑賞って…?
腐 あんた、バカァ!?
デートの定番って言えば…わ、わかるでしょうがよ…ッ!
苗 (デートの定番で鑑賞するものか…もちろん、あれしかないよな…)
映画鑑賞…?
腐 そ、そうよ…涼しいし…後で映画の話題で盛り上がれるし…
つ、つまり…最初のデートにうってつけ…あたしは…その結論を導き出したのよ…!
苗 (丸3日徹夜で…)
腐 お次は…見に行く映画のセレクトだけど…
やっぱり、もう中学2年生だし…子供向け映画って訳にもいかないから…
ダイナミックのアクション映画を…
苗 …うん、男の子なら喜ぶセレクトだよね。すかっとするし!
腐 だから…名画座にね…鈴木清順特集を観に行ったの…
”東京流れ者””けんかえれじい””殺しの烙印”…男子には堪らないセレクションでしょ?
苗 えっと…それって…?
腐 知らないの? 鈴木清順知らないの?
清順美学よ! あの独特な色彩感覚を持つ映像表現よ!
苗 ご、ごめん…
腐 主人公の殺し屋は、米の炊ける匂いに興奮するのよ。そんな名作…殺しの烙印を知らないなんて…
苗 でも、ボクだけじゃなくって…あんまり普通の高校生は知らないんじゃないかな…
腐 うぐぐっ…!
薄々…勘付いてはいたけど…や、やっぱりそうだったのね…
映画の途中で…隣に座ってた彼が消えてたのは…そういう理由が…あったからだったのね…!
苗 え? 途中で帰っちゃったの?
それは、さすがに酷いよ…せっかく腐川さんが考えてくれたデートプランなのに…
腐 し、仕方がないわ…そもそも罰ゲームだったみたいだし…
苗 …罰ゲーム?
腐 あ、あたしをデートに誘ったのは…仲間内での罰ゲームだったみたいなの…
アハハ…それを知らずに、あたしったら…3日も徹夜でプラン考えて…
…って、重いトラウマを思い出しちゃったじゃないの! あんたのせいよ…ッ!!
苗 ボ、ボクのせい!?
腐 そ、そうやって…あたしを辱めるのが…あんたの喜びなのね…?
ようやく…あんたの本性が見えてきたわ…
苗 い、いや…ボクは…
腐 こ、これ以上付き合っていられないわよ…! あんたの変態的な性癖なんかに…!
か、帰らせてもらいますっ!!
苗 (憎しみを込めた目でボクを睨みながら、腐川さんはその場から去っていった…)
今度こそ本当に…嫌われたな…
通信簿イベント-4

腐 ………………
………………
苗 (腐川さん、またボクに無言のプレッシャーを…)
腐 責任…取りなさいよ…
苗 …え?
せ、責任って…なんの責任?
腐 こんな場所に閉じ込められて…や、やる事もなくてヒマだから…
小説を書こうと思ったのよ…とびっきりの…最高の恋愛小説を…
だ、だけど…書けなかった…
苗 え? どうして?
腐 ス、スランプよ…あたしの妄想力が極度のスランプなのよ…
こんなの…初めて…
苗 でも、どうして?
腐 あ、あんたが! あたしのトラウマをほじくり返すせいじゃない!
苗 ボクのせい!?
腐 ううっ…もういやっ…! 書きたくない…小説家なんか辞める…
苗 や、辞めるなんて…もったいないよ! せっかく才能があるのに…
腐 いいの…辞めさせて…そもそも才能なんてなかったのよ…!
もう…やる気も気力もないわ……
苗 (駄目だ。完全にネガティブ思考に支配されてる…)
ねぇ、腐川さん…そういう時は、初心を思い出してみたらどうかな?
腐 初心って…?
苗 腐川さんが小説家になろうとしたきっかけだよ。
それを思い出したら、少しはやる気になるんじゃない?
腐 ………………
すべての始まりは…1通のラブレターからよ…
苗 ラブレター?
腐 小学校の頃…あたしは…初めての恋をしたの…
相手は…幼馴染の男の子だったわ…
最初は…恋愛感情なんてなかったけど…あたしが気兼ねなく話せる…唯一の男子だった…
その彼がね…遠くに…四国に引っ越す事になったの…
彼がいなくなると知った途端…なんだか…胸が締め付けられるような想いになって…
自分でも不思議だった…まさか…そんな気持ちになるなんて…
で、でも…直接言うのは恥ずかしいから…だから…手紙に書いて渡す事にしたの…
そ、そうしたら…
苗 そうしたら…?
腐 彼が転校した翌日…学校の掲示板にそのラブレターが張り出されていたわ…
苗 え…?
腐 後で…聞いたところによるとね…
彼は気兼ねなく話しかけてくるあたしに、うんざりしていたらしいのよ…
お陰で、他のクラスメイトからもバカにされてたらしいわ…
そ、その仕返しって事かしら? あたしの渾身のラブレターを晒して行ったのよ…!
苗 (な、なんて悲惨な初恋なんだ…!)
腐 で、でもね…そのラブレターを見た先生が…あたしには文章の才能があるって…
それが…書き始めるきっかけ…
苗 そ、そうだったんだ…
腐 ううっ…また思い出しちゃったじゃないの…あ、あんたのせいで…ヘビーなトラウマを…!
だ、駄目だわ…もう本気で書けない…素敵な恋愛話なんて…!
苗 だ、だったらさ…恋愛小説以外を書いてみたら?
腐 …は?
苗 なんて言うか…腐川さんの素直な気持ちを書いてみたら?
腐 つ、つまり…この虚無感や怒りを…そのまま小説にしてしまえと言うのね…
苗 (むしろ、その方が向いている気がするし…)
腐 アハ…アハハ…! 面白そうじゃない…! いいわ…やってあげようじゃない…!
あたしの素直な気持ち…アハハ…! やって…やってやるわよ! アハハハハ…!
苗 (気味の悪い笑い声を残し、腐川さんはその場を立ち去っていった…)
な、なんとか…やる気にはなってくれたみたいだけど…
…本当に良かったのかな?
通信簿イベント-5

腐 な、苗木…ちょっと、あたしの部屋まで来てくれる?
苗 …え?
腐 あんたに…見せたい物があるの…ま、待ってる…わよ…
苗 (どうしたんだ腐川さん…急にボクを呼び出したりして…
しかも、腐川さんの部屋になんて…)
とりあえず…行ってみるか…
(腐川さんに言われた通り、ボクはすぐに彼女の部屋へと向かった。)
腐 よ、よく来たわね…
で、でも勘違いしないでよ…! あたしは…そういうアレで呼び出した訳じゃないから!
押し倒したりしたら…舌噛んで…死んでやるわよ…!
苗 その心配はないよ…
それより、どうしたの? ボクに見せたい物って?
腐 これよ…これを見てもらいたかったのよ…
苗 (そう言って、腐川さんはボクに、分厚い紙の束を手渡した。
そこには、腐川さんの手書きの文字がびっしりと並んでいた。)
もしかして、これって…
腐 あんたに言われたように書いてみたわ…まずは…読んでみて…
苗 う、うん…
(ボクは言われるままに、文字の上に視線を滑らせていった。
ものの数秒で止まらなくなった…
次々と言葉が頭の中に流れ込み、そして、景色として目の前に広がっていく!)
お、面白い…
面白いよ、腐川さん! こんな面白い小説なんて初めてだよ!
腐 そ、そうでしょう? うふ…うふふ…!
苗 (だけど…
暗い! すごく暗い! 読むのが辛くなる位に暗いぞ!)
腐 そういう小説…なんて呼ぶか知ってる? 作者が直接経験した事を…題材に書かれた小説…
日本における自然主義文学…田山花袋の蒲団なんかがその始まりであるとされる…
苗 (作者が直接経験した事を題材に書かれた小説…それって…国語の授業とかで習った事があるな…)
私小説…だったよね?
腐 えぇ…その通りよ…
あたしの小説はまだ途中だけど…それが完成されれば…
私小説の歴史を変える衝撃的名作になる! それは間違いないわ!!
苗 (でも、それも…あながち間違ってないかも…
だって、こんなに暗くて重いのに、読み進めてしまう面白さがあるなんて…)
名作だよ…間違いなく名作だよ。
腐 苗木、あんたのお陰よ…
あんたのお陰で…あたしは…
………………
だ、駄目だわ…恥ずかしい…
その感謝の意は…詩を通して伝えるわね…
苗 詩を…通して…?
腐 閉ざされた錆付いた扉に…あたしは激しく爪を立てている…
割れた爪から流れる生温かい血が、手首に…あたしの体に…蛇のように絡みつく…
あなたはそれを見ている。笑いながら見ている。
やがて、あなたは逃げて行く…赤い血の海に寝そべるあたしだけを残して…
…伝わったでしょ? 今のがあたしの気持ちよ。
苗 (いや、まったく伝わらないけど…
でも、腐川さんがいいなら、それでいいか…
そんな気持ちになるのって、少しは腐川さんの事がわかってきたからなのかな?)
腐 ところで…もう話は終わったのよ…
それに…あんたのお陰でやる気になって…だから…早く続きを書きたいのよ…
あたしが…やる気になってるんだから…そ、それを応援するのが…
な、仲間…なんでしょ…?
苗 (仲間…腐川さんがその言葉を使うって事は…
ようやく腐川さんとも仲間になれた…そういう事なのかもしれない。)
腐 ほら…! さっさと出て行きなさいよ…! あ、あたしを押し倒す前に出て行きなさいよ…!
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